フーリエ変換は3ステップで導出されます:(1)三角関数の和で周期関数を近似する『フーリエ級数展開』(2)周期→∞とし非周期関数を近似する『フーリエ積分』(3)その被積分関数を取り出して得られる『フーリエ変換』 これらの精確な定義と計算過程を示します.三角関数の直交性を用います.
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フーリエ級数からフーリエ変換の公式導出のあらすじとフーリエ変換の意味
本稿では,周期関数のフーリエ級数展開の定義からはじめて,関数のフーリエ変換の公式を導出する計算過程を示す.フーリエ変換導出には,次の3ステップを要する.
- 三角関数の重ね合わせによって周期関数を近似する『フーリエ級数展開』を定義する.
- フーリエ級数の周期を無限大として,周波数に関する和を積分に読み替え,非周期関数を近似する『フーリエ積分』を導出する.
- フーリエ積分から周波数に関する被積分関数を取り出して,〈元の関数〉から〈周波数の関数〉への変換である『フーリエ変換』を得る.
フーリエ級数展開とフーリエ変換(Fourier series and Fourier transform)
フーリエ級数
区間
における,周期
の区分的になめらかな周期関数
のフーリエ級数展開は
(1) ![]()
ただし,フーリエ係数
,
は
(2) ![]()
(3) ![]()
である.
三角関数の直交性(orthogonality)
に対して,次式が成り立つ.
(4) ![]()
(5) ![]()
(6) ![]()
ただし
および
である.
(4)~(6)式を示す.
[三角関数の直交性の証明 については こちら]
(7) ![]()
を得る.すなわち(2)式はwell-definedである.同様に,(3)式右辺に(1)式を代入することで(3)式のwell-definednessを確かめることができる.
複素形式のフーリエ級数
に注意すると
(8) ![]()
を得る.ここで
(9) ![]()
などとすると,これらをまとめて
(10) ![]()
とできることが分かる.したがって(1)式は
(11) ![]()
と書き直すことができる.(10)を複素フーリエ係数,(11)を関数
の複素フーリエ級数という.
フーリエ積分
フーリエ級数展開される関数
が非周期関数の場合,
とすることによって,フーリエ級数はフーリエ積分と呼ばれるものになる.(2)式と(3)式の積分区間を
とし,(1)式に代入すれば
(12) ![]()
を得る.
(13) ![]()
とすると,
より,(12)式の右辺第2項は
(14) ![]()
となる.また,非周期関数
が絶対積分可能である(i.e.
が存在する)と仮定すると,
としたとき(12)式の右辺第1項は0となる.さらに,
のとき
となり
は連続変数とみなせるため,和を積分に変えることができる.すなわち,
(15) ![]()
ここで得られた
(16) ![]()
を,フーリエ積分公式という.また,(16)式は
(17) ![]()
のように書くこともできる.
フーリエ変換
フーリエ積分(17)の
に関する被積分関数を取り出して
(18) ![]()
のように関数
を定義し,これを
のフーリエ変換という.(17)式に(??)を代入すれば,もとの関数
が得られる:
(19) ![]()
これをフーリエ逆変換という.
フーリエ変換,フーリエ逆変換は定義に係数部分の不定性があり,
(20) ![]()
などと定義することもある.
離散フーリエ変換
フーリエ変換(18)およびフーリエ逆変換(19)は,定義域として
および
なる連続値を持っている.これに対して,離散的かつ有限個のデータ系列に関するスペクトルを定義するのが離散フーリエ変換である.
あるデータ系列
が与えられたとき,
(21) ![]()
で得られる
を
の離散フーリエ変換という.
ただし
は虚数単位である.



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