統計的推定,点推定値,推定量の定義と意味【統計学】

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定義:推定,点推定値,推定量

母集団や分布を特徴づけるパラメータ\thetaを,n個の標本から得た観測値x_1,...,x_nn個のiid確率変数X_1,...,X_nを引数とする関数Tによって予想することを推定(estimation)あるいは統計的推定(statistical estimation)という.

パラメータ\thetaを観測値x_1,...,x_nを引数とする関数Tによって推定するとき,この値を

(1)   \begin{equation*} \hat \theta = T(x_1,...,x_n) \end{equation*}

のように\hatを付けて\hat \thetaと書き,これを\theta点推定値(point estimate)あるいは単に推定値(estimate)という.

標本を表すn個のiid確率変数X_1,...,X_nを引数とする関数を統計量(statistic)というが,関数(1)の引数をiid確率変数X_1,...,X_nとした統計量

(2)   \begin{equation*} T = T(X_1,...,X_n) \end{equation*}

をパラメータ\theta推定量(estimator)という.

推定値と推定量の関係

確率変数の関数は確率変数なので,一般に統計量は確率変数である.したがって,パラメータ\thetaの推定量T = T(X_1,...,X_n)(すなわち(2))もまた確率変数である.他方,パラメータ\thetaの推定値\hat \theta = T(x_1,...,x_n)(すなわち(1))は特定の実数値であるが,その引数x_1,...,x_nを確率変数X_1,...,X_nの実現値であると考えれば,推定値\hat thetaを推定量Tの実現値であるとみなすことができる.

推定値と推定量の例

例1:確率分布のパラメータ推定

ある確率分布に従う確率変数Xの期待値(expected value)がE[X]=\muであるとする.また,この分布に関するiid確率変数列をX_1,...,X_nとし,それらの実現値をx_1,...,x_nとする.このとき,\muの推定量はX_1,...,X_nの標本平均

(3)   \begin{equation*} \bar X = \sum_{i=1}^{n} X_i \end{equation*}

であり,\muの推定値はx_1,...,x_nの標本平均

(4)   \begin{equation*} \bar x = \sum_{i=1}^{n} x_i \end{equation*}

である.\muの推定量\bar Xは確率変数であり,\muの推定値\bar xはその実現値である.

例2:母集団のパラメータ推定

ある母集団(population)の母平均(population mean)が\muであるとし,母集団から得られたn個の標本をx_1,...,x_nとする.また,これらの観測値をiid確率変数X_1,...,X_nの実現値であるとみなすことにする.このとき,\muの推定値はx_1,...,x_nの標本平均

(5)   \begin{equation*} \bar x = \sum_{i=1}^{n} x_i \end{equation*}

であり,\muの推定量はX_1,...,X_nの標本平均

(6)   \begin{equation*} \bar X = \sum_{i=1}^{n} X_i \end{equation*}

である.\muの推定量\bar Xは確率変数であり,\muの推定値\bar xはその実現値である.

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