内積(ベクトルの内積)とは?定義・公式・計算例・意味・英語訳【線形代数】

ベクトルの内積には2種類の定義の仕方があります.ひとつは長さと交角による定義で,もうひとつはベクトルの成分の積和による定義です.内積は2次元平面上のベクトルについて導入され,後者の定義から多次元ベクトルの内積へと拡張されます.内積が定義されると,空間にノルムを導入できます.ベクトルの内積は,行列の積とも関係しています.

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準備

ベクトルの長さ

向きを持たない量であるスカラー(scalar)と区別するために,長さと向きを持つ量であるベクトル(vector)は,ボールド体で\bf aなどと表記される.

ベクトル\bf aの始点(initial point)から終点(terminal point)までの線分の長さは,ベクトル\bf a長さ(length),大きさ(magnitude),または絶対値(absolute value)といい,|| {\bf a} ||| {\bf a} |a などで表す.

列ベクトルと行ベクトル

n個の成分(components)からなるベクトルには,次の2つの表記法がある.成分を

(1)   \begin{equation*} \left( \begin{array}{c} a_0\\ a_1\\ \vdots \\ a_i \\ \vdots \\ a_{n-1} \end{array} \right) \end{equation*}

のように,縦に書き並べるとき,これをn次元列ベクトルまたは縦ベクトル(n-dimensional column vector)という.n次元列ベクトルはn\times 1行列(n\times 1 matrix)と同一視できる.また,成分を

(2)   \begin{equation*} \left( a_0, a_1,...,a_i,...,a_{n-1} \right) \end{equation*}

のように,横に書き並べるとき,これをn次元行ベクトルまたは横ベクトル(n-dimensional row vector)という.n次元行ベクトルは1\times n行列と同一視できる.

ベクトルの転置(transpose of a vector)

ベクトルや行列の列と行を入れ替えることを,ベクトルや行列の転置(transpose)という.

ベクトル\bf a転置ベクトル(transposed vector)は \;^t{\bf a}{\bf a}^{\rm T}{\bf a}^{\top} などで表す.

(例)

(3)   \begin{equation*} {\bf a} = \left( \begin{array}{c} a_0\\ a_1\\ \vdots \\ a_i \\ \vdots \\ a_{n-1} \end{array} \right) \end{equation*}

のとき

(4)   \begin{equation*} ${\bf a}^{\top}$ = \left( a_0, a_1,...,a_i,...,a_{n-1} \right) \end{equation*}

となる.

内積の定義 (definition of inner product)

2つのベクトルの長さと,それらのなす角が与えられたとき,それらのベクトルの内積(inner product)は,以下のように定義される.ベクトルが定義される空間やベクトルの表示により,いくつかの異なる定義の仕方がある.

なお,複素ベクトル(complex vectors)の内積を定義するためには,複素共役(complex conjugate)またはエルミート共役(Hermitian conjugate)なベクトルを用いる必要がある.

本節では,実ベクトル(real vectors)に関する内積の定義を与える.

内積の定義(1)長さと交角に基づく内積

内積の定義(1)
平面上の2つの実ベクトル\bf a\bf b について,それらの長さ| {\bf a}||{\bf b}| と,それらのなす角\theta が与えられているとする.

このとき,ベクトル\bf a\bf b の内積\bf a \cdot b

(5)   \begin{equation*} {\bf a \cdot b} := | {\bf a}|\;|{\bf b}|\; \cos \theta \end{equation*}

で定義される.

ベクトル\bf a\bf b の内積は,

(6)   \begin{equation*} ({\bf a}, {\bf b}) \end{equation*}

あるいは

(7)   \begin{equation*} \langle {\bf a}, {\bf b}\rangle \end{equation*}

のように表記されることもある.

内積の定義(2-1)2次元実ベクトルの内積

内積の定義(1)は,ベクトルを平面上の有向線分とみなし,それらの長さと交角を用いた幾何学的な定義であった.

これに対して,2つの2次元実ベクトル(2-dimentional real vectors)について,それぞれのベクトルの成分(components)が与えられたときには,それらのベクトルの内積を,以下のように代数的に定義できる.

内積の定義(2-1)
2つの2次元実ベクトル\bf a\bf b の成分がそれぞれ

(8)   \begin{equation*} {\bf a} = \left( \begin{array}{c} a_0\\ a_1\\ \end{array} \right), \quad {\bf b} = \left( \begin{array}{c} b_0\\ b_1\\ \end{array} \right) \end{equation*}

のように与えられたとする.

このとき,ベクトル\bf a\bf b の内積\bf a \cdot b

(9)   \begin{equation*} {\bf a \cdot b} := a_0 b_0 + a_1 b_1 \end{equation*}

で定義される.また,行列の計算規則との整合性を保ち,後に述べる外積(outer product)との区別を明確にするため,左側のベクトルを行ベクトル,右側のベクトルを列ベクトルで表記し,内積を

(10)   \begin{equation*} ${\bf a}^{\top}$ \cdot {\bf b} = \left( a_0, a_1\right) \left( \begin{array}{c} b_0\\ b_1\\ \end{array} \right) := a_0 b_0 + a_1 b_1 \end{equation*}

と表記する場合もある.

定義(2-1)から定義(1)を導く

内積の定義(1)と定義(2-1)が一致することは,余弦定理を用いて次のように示すことができる.

2つの2次元実ベクトル\bf a\bf b の長さをそれぞれabとし,それらの交角を\thetaとする.ベクトル\bf a\bf b は,適当な2次元座標系の元で

(11)   \begin{equation*} {\bf a} = \left( \begin{array}{c} a_0\\ a_1\\ \end{array} \right) = \left( \begin{array}{c} a \cos \phi\\ a \sin \phi\\ \end{array} \right), \quad {\bf b} = \left( \begin{array}{c} b_0\\ b_1\\ \end{array} \right) = \left( \begin{array}{c} b \cos (\theta + \phi)\\ b \sin (\theta + \phi) \\ \end{array} \right) \end{equation*}

と書くことができる.

内積の定義(2-1)の式(9)に式(11)を代入すると,

(12)   \begin{eqnarray*} {\bf a}^{\top}$ \cdot {\bf b} &=& \left( a \cos \phi, a \sin \phi\right) \left( \begin{array}{c} b \cos (\theta + \phi)\\ b \sin (\theta + \phi)\\ \end{array} \right)\\ &=& a \cos \phi \cdot b \cos (\theta + \phi) + a \sin \phi \cdot b \sin (\theta + \phi)\\ &=& ab \left\{ \cos \phi \cos (\theta + \phi) + \sin \phi \sin (\theta + \phi) \right\}\\ &=& ab \cos (\theta + \phi -\phi) \\ &=& ab \cos \theta \end{eqnarray*}

よって式(5)を得る.

あるいは,次のように考えるとより直感的に把握しやすいかもしれない.

2つの2次元実ベクトル\bf a\bf b の長さをそれぞれabとし,それらの交角を\thetaとする.ベクトル{\bf a}=(a,0)^{\top}となるように2次元直交座標系を取る.このときabの交角は\thetaなので{\bf b}=(b \cos \theta, b \sin \theta)^{\top} となる.したがって,{\bf a}^{\top} \cdot {\bf b} = a \cdot b \cos \theta + 0 \cdot b \sin \theta = ab \cos \theta を得る.これは,式(11)のabに対して,角度\phiの回転行列によって,ベクトルまたは座標系を回転させることと同じである.

内積の定義(2-2)n次元実ベクトルの内積

内積の定義(2-1)は,2つのベクトルを2次元実ベクトルであるとしたが,自然な拡張として,一般のn次元実ベクトルの内積を次のように定義できる.

内積の定義(2-2)
2つの実ベクトル\bf a\bf b の成分がそれぞれ

(13)   \begin{equation*} {\bf a} = \left( \begin{array}{c} a_0\\ a_1\\ \vdots \\ a_i \\ \vdots \\ a_{n-1} \end{array} \right), \quad {\bf b} = \left( \begin{array}{c} b_0\\ b_1\\ \vdots \\ b_i \\ \vdots \\ b_{n-1} \end{array} \right) \end{equation*}

のように与えられたとする.

このとき,ベクトル\bf a\bf b の内積は

(14)   \begin{eqnarray*} {\bf a } \cdot {\bf b} &:=& a_0 b_0 + a_1 b_1 + \cdots + a_i b_i + \cdots + a_{n-1} b_{n-1} \\ &=& \sum_{i=0}^{n-1} a_i b_i \end{eqnarray*}

あるいは

(15)   \begin{eqnarray*} {\bf a}^{\top} \cdot {\bf b} &=& \left( a_0, a_1,...,a_i,...,a_{n-1} \right) \left( \begin{array}{c} b_0\\ b_1\\ \vdots \\ b_i \\ \vdots \\ b_{n-1} \end{array} \right)\\ &:=& a_0 b_0 + a_1 b_1 + \cdots + a_i b_i + \cdots + a_{n-1} b_{n-1} \\ &=& \sum_{i=0}^{n-1} a_i b_i \end{eqnarray*}

で定義される.

行列の積(「行列の内積」は誤記)

行列の積

行列の積(product)は,以下のように定義される.左の行列の行と,右の行列の列に対して,ベクトルの内積と同じ操作を行うが,「行列の内積」とは呼ばない

n\times m行列Am\times l行列Bの積ABは,次のようなn\times l行列となる.

(16)   \begin{equation*} AB= \left( \begin{array}{cccccc} a_{11} & a_{12} &...&a_{1j}&...&a_{1m}\\ a_{21} & a_{22} &...&a_{2j}&...&a_{2m}\\ \vdots & \vdots & &\vdots& &\vdots\\ a_{i1} & a_{i2} &...&a_{ij}&...&a_{im}\\ \vdots & \vdots & &\vdots& &\vdots\\ a_{n1} & a_{n2} &...&a_{nj}&...&a_{nm}\\ \end{array} \right) \left( \begin{array}{cccccc} b_{11} & b_{12} &...&b_{1k}&...&b_{1l}\\ b_{21} & b_{22} &...&b_{2k}&...&b_{2l}\\ \vdots & \vdots & &\vdots& &\vdots\\ b_{j1} & b_{j2} &...&a_{jk}&...&b_{jl}\\ \vdots & \vdots & &\vdots& &\vdots\\ b_{m1} & b_{m2} &...&b_{mk}&...&b_{ml}\\ \end{array} \right) \end{equation*}

(17)   \begin{equation*} = \left( \begin{array}{cccccc} \sum_{j=1}^{m} a_{1j}b_{j1} & \sum_{j=1}^{m} a_{1j}b_{j2} &...&\sum_{j=1}^{m} a_{1j}b_{jk}&...&\sum_{j=1}^{m} a_{1j}b_{jl}\\ \sum_{j=1}^{m} a_{2j}b_{j1} & \sum_{j=1}^{m} a_{2j}b_{j2} &...&\sum_{j=1}^{m} a_{2j}b_{jk}&...&\sum_{j=1}^{m} a_{2j}b_{jl}\\ \vdots & \vdots & &\vdots& &\vdots\\ \sum_{j=1}^{m} a_{ij}b_{j1} & \sum_{j=1}^{m} a_{ij}b_{j2} &...&\sum_{j=1}^{m} a_{ij}b_{jk}&...&\sum_{j=1}^{m} a_{ij}b_{jl}\\ \vdots & \vdots & &\vdots& &\vdots\\ \sum_{j=1}^{m} a_{nj}b_{j1} & \sum_{j=1}^{m} a_{nj}b_{j2} &...&\sum_{j=1}^{m} a_{nj}b_{jk}&...&\sum_{j=1}^{m} a_{nj}b_{jl}\\ \end{array} \right) \end{equation*}

n\times m行列Am\times l行列Bの成分a_{ij}b_{jk}に対して,n\times l行列ABの要素c_{ik}

(18)   \begin{equation*} c_{ik} := \sum_{j=1}^{m} a_{ij}b_{jk} \end{equation*}

となる.

また,一般に,行列ではAB \not= BAであることに注意せよ.n\not=lであればBAは計算することもできない.

行列の積が「行列の内積」ではない理由

後節「内積空間」で述べる通り,一般に内積 \langle \cdot , \cdot \rangle とは,ベクトル空間の直積からスカラーの体への写像 \langle \cdot , \cdot \rangle : {\bf V} \times {\bf V} \to K で,非負性を含むいくつかの性質を満たすようなもののことである.

すなわち,内積の計算結果は,非負スカラー値となる.

実際,前述したベクトルの内積の定義(1)~(2-2)については,この条件を満たす.

しかるに,一般の行列の積の計算結果は,スカラーではなく行列である.すなわち,行列の積は,内積の一般的な定義を満たしていない

したがって,行列の積(17)は,「行列の内積」と呼ぶべきではない.

内積と外積(outer product),クロス積(cross product)

内積と共に紹介されることの多いベクトルの積として,外積(outer product) と クロス積(cross product)(あるいはベクトル積(vector product))がある.

ベクトルの外積(outer product)

ベクトルの内積(inner product)が2つのn次元ベクトルからスカラー(scalar)をつくる二項演算であったのに対し,ベクトルの外積(outer product)は,n次元ベクトルとm次元ベクトルからn\times m行列をつくる二項演算である.両者における行ベクトルと列ベクトルの使い方に注意せよ.

外積の定義
n次元ベクトル\bf a,およびm次元ベクトル\bf b の成分がそれぞれ

(19)   \begin{equation*} {\bf a} = \left( \begin{array}{c} a_0\\ a_1\\ \vdots \\ a_i \\ \vdots \\ a_{n-1} \end{array} \right), \quad {\bf b} = \left( \begin{array}{c} b_0\\ b_1\\ \vdots \\ b_j \\ \vdots \\ b_{m-1} \end{array} \right) \end{equation*}

のように与えられたとする.

このとき,ベクトル\bf a\bf b の外積は

(20)   \begin{eqnarray*} ${\bf a}$ \otimes {\bf b} = ${\bf a}$ {\bf b}^{\top} &=& \left( \begin{array}{c} a_0\\ a_1\\ \vdots \\ a_i \\ \vdots \\ a_{n-1} \end{array} \right) \left( b_0, b_1,...,b_j,...,b_{m-1} \right)\\ &:=& \left( \begin{array}{cccccc} a_0 b_0 & a_0 b_1 &...&a_0b_j&...&a_0b_{m-1}\\ a_1 b_0 & a_1 b_1 &...&a_1b_j&...&a_1b_{m-1}\\ \vdots & \vdots & &\vdots& &\vdots\\ a_i b_0 & a_i b_1 &...&a_ib_j&...&a_ib_{m-1}\\ \vdots & \vdots & &\vdots& &\vdots\\ a_{n-1}b_0 & a_{n-1} b_1 &...&a_{n-1}b_j&...&a_{n-1}b_{m-1}\\ \end{array} \right) \end{eqnarray*}

で定義される.

ベクトルのクロス積(cross product)あるいはベクトル積(vector product) *

ベクトルのクロス積(ベクトル積)の定義

ベクトルのクロス積は,2つの3次元ベクトルが張る平面に垂直な3次元ベクトルをつくる二項演算である.クロス積はベクトル積(vector product)とも呼ばれる.ベクトルのクロス積は,古典力学や電磁気学でも頻出する.日本語文献では,このクロス積を「外積」と呼ぶものも多いので,注意が必要である.

クロス積の定義
3次元ベクトル\bf a\bf b の成分がそれぞれ

(21)   \begin{equation*} {\bf a} = \left( \begin{array}{c} a_0\\ a_1\\ a_2 \\ \end{array} \right), \quad {\bf b} = \left( \begin{array}{c} b_0\\ b_1\\ b_2 \\ \end{array} \right) \end{equation*}

のように与えられたとする.

このとき,ベクトル\bf a\bf b のクロス積は

(22)   \begin{eqnarray*} {\bf a} \times {\bf b} &=& \left( \begin{array}{c} a_1 b_2 - a_2 b_1 \\ a_2 b_0 - a_0 b_2 \\ a_0 b_1 - a_1 b_0 \\ \end{array} \right) \end{eqnarray*}

で定義される.

ベクトルのクロス積の幾何学的意味:「向き付き平行四辺形」

クロス積{\bf a} \times {\bf b}には,次のような幾何学的意味がある:

  • クロス積{\bf a} \times {\bf b}は,ベクトル\bf a\bf bが張る平面に垂直なベクトルであり,その向きは{\bf a}から{\bf b}の方向へ回すときに右ねじが進む向きである.したがって{\bf b} \times {\bf a}は,{\bf a} \times {\bf b}の逆向きのベクトル({\bf b} \times {\bf a}=-{\bf a} \times {\bf b})となる(「向き付き」).
  • {\bf a} \times {\bf b}は,ベクトル\bf a\bf bが張る平面に垂直なベクトルであり,その大きさは\bf a\bf bを隣り合う二辺とする平行四辺形の大きさ

    (23)   \begin{equation*} |{\bf a} \times {\bf b}| = |{\bf a}|\; |{\bf b}| \sin \theta \end{equation*}

    となる.

  • これらより,{\bf a} \times {\bf b}\bf a\bf bを隣り合う二辺とする平行四辺形に対応付けたとすると,(-{\bf a}) \times {\bf b}{\bf a} \times (-{\bf b})はその鏡像対称(線対称)な平行四辺形であり,クロス積の向きで平行四辺形の表裏を「ラベリング」できる(向き付き平行四辺形).

内積の計算の具体例・内積の求め方の例

2次元ベクトルの内積の計算例(1)

2つの2次元実ベクトル\bf a\bf b の長さがそれぞれ3,4,\bf a\bf bのなす角が\pi/6であるとする.このとき,ベクトル\bf a\bf b の内積{\bf a} \cdot {\bf b} は,

(24)   \begin{eqnarray*} {\bf a} \cdot {\bf b} &=& 3\cdot 4\cdot \cos \frac{\pi}{6} \\ &=& 3\cdot 4\cdot \frac12 = 6 \end{eqnarray*}

2次元ベクトルの内積の計算例(2)

2つの2次元実ベクトル\bf a\bf b の成分がそれぞれ

(25)   \begin{equation*} {\bf a} = \left( \begin{array}{c} 1\\ 2\\ \end{array} \right), \quad {\bf b} = \left( \begin{array}{c} 3\\ 4\\ \end{array} \right) \end{equation*}

のように与えられたとする.このとき,ベクトル\bf a\bf b の内積{\bf a}^{\top} \cdot {\bf b} は,

(26)   \begin{eqnarray*} {\bf a}^{\top} \cdot {\bf b} &=& \left( 1, 2\right) \left( \begin{array}{c} 3\\ 4\\ \end{array} \right)\\ &=& 1 \cdot 3 + 2 \cdot 4 \\ &=&3+8 = 11 \end{eqnarray*}

3次元ベクトルの内積の計算例

2つの3次元実ベクトル\bf a\bf b の成分がそれぞれ

(27)   \begin{equation*} {\bf a} = \left( \begin{array}{c} 2\\ 4\\ 6 \end{array} \right), \quad {\bf b} = \left( \begin{array}{c} 3\\ 5\\ 7 \end{array} \right) \end{equation*}

のように与えられたとする.このとき,ベクトル\bf a\bf b の内積{\bf a}^{\top} \cdot {\bf b} は,

(28)   \begin{eqnarray*} {\bf a}^{\top} \cdot {\bf b} &=& \left( 2, 4, 6\right) \left( \begin{array}{c} 3\\ 5\\ 7 \end{array} \right)\\ &=& 2 \cdot 3 + 4 \cdot 5 + 6 \cdot 7 \\ &=&6+20 +42 = 68 \end{eqnarray*}

4次元ベクトルの内積の計算例

2つの4次元実ベクトル\bf a\bf b の成分がそれぞれ

(29)   \begin{equation*} {\bf a} = \left( \begin{array}{c} 2\\ 4\\ 6\\ 8 \end{array} \right), \quad {\bf b} = \left( \begin{array}{c} 3\\ 5\\ 7\\ 9 \end{array} \right) \end{equation*}

のように与えられたとする.このとき,ベクトル\bf a\bf b の内積{\bf a}^{\top} \cdot {\bf b} は,

(30)   \begin{eqnarray*} {\bf a}^{\top} \cdot {\bf b} &=& \left( 2, 4, 6, 8\right) \left( \begin{array}{c} 3\\ 5\\ 7\\ 9 \end{array} \right)\\ &=& 2 \cdot 3 + 4 \cdot 5 + 6 \cdot 7 + 8\cdot 9 \\ &=&6+20 +42 + 72 = 140 \end{eqnarray*}

内積とノルム(norm)

n次元実ベクトル\bf xについて,そのベクトル自身との内積の平方根

(31)   \begin{equation*} ||{\bf x}|| := \sqrt{{\bf x} \cdot {\bf x}} \end{equation*}

で定義される量||{\bf x}||をベクトル\bf xノルム(norm)という.

\bf x=(x_1,...,x_n)^{\top}としたとき,\bf xのノルムは

(32)   \begin{eqnarray*} ||{\bf x}|| &:=& \sqrt{{\bf x} \cdot {\bf x}}\\ &=& \sqrt{x_1^2 + \cdots + x_n^2} \end{eqnarray*}

となる.すなわち\bf xのノルムはベクトル\bf xの長さと一致する.

ノルムは次のような性質を満たす.

ノルムの性質
  1. ||{\bf x}|| \ge 0:非負性
  2. ||{\bf x}|| = 0 \iff {\bf x} = {\bf 0}
  3. ||\alpha{\bf x}|| = |\alpha|\;||{\bf x}||}:スカラー倍
  4. ||{\bf x}+{\bf y}|| \le ||{\bf x}||+||{\bf y}||:三角不等式(triangle inequality)(絶対値・ノルムに関する劣加法性(subadditivity))

逆に,上のノルムの性質をノルムの定義とすることで,ノルムの概念は一般化される.ノルム概念が一般化された下では,定義式(31)は,数あるノルムの中のひとつでしかなくなる.このとき,式(31)で与えられるノルムは特にユークリッドノルム(Euclidean norm)あるいはL^2ノルムと呼ばれる.

内積を用いたベクトルの交角の求め方

内積の定義(1)を用いて,2つのベクトルの交角を求めることができる.定義より,平面上の2つの実ベクトル\bf a\bf b の内積は

(33)   \begin{equation*} {\bf a \cdot b} := | {\bf a}|\;|{\bf b}|\; \cos \theta \end{equation*}

だから,

(34)   \begin{equation*} \cos \theta = \frac{ {\bf a \cdot b}}{| {\bf a}|\;|{\bf b}|} \end{equation*}

によって交角\theta\;(0\le \theta \le \pi)を得る.

(例)2つの2次元実ベクトル\bf a\bf b の成分がそれぞれ

(35)   \begin{equation*} {\bf a} = \left( \begin{array}{c} \sqrt{3}\\ 0\\ \end{array} \right), \quad {\bf b} = \left( \begin{array}{c} \sqrt{3}\\ 1\\ \end{array} \right) \end{equation*}

のように与えられたとする.このとき,|{\bf a}||{\bf b}| は,式(32)より,

(36)   \begin{eqnarray*} |{\bf a}| &=& \sqrt{{\bf a}^{\top}\cdot {\bf a}}\\ &=& \sqrt{ \left(\sqrt{3},0\right) \left( \begin{array}{c} \sqrt{3}\\ 0\\ \end{array} \right) }\\ &=& \sqrt{\sqrt{3}\cdot \sqrt{3} + 0\cdot 0} = \sqrt{3} \end{eqnarray*}

(37)   \begin{eqnarray*} |{\bf b}| &=& \sqrt{{\bf b}^{\top}\cdot {\bf b}}\\ &=& \sqrt{ \left(\sqrt{3},1\right) \left( \begin{array}{c} \sqrt{3}\\ 1\\ \end{array} \right) }\\ &=& \sqrt{\sqrt{3}\cdot \sqrt{3} + 1\cdot 1} = 2 \end{eqnarray*}

また,{\bf a}{\bf b}の内積は,

(38)   \begin{eqnarray*} {\bf a}^{\top}\cdot {\bf b}} &=& \left(\sqrt{3},0\right) \left( \begin{array}{c} \sqrt{3}\\ 1\\ \end{array} \right)\\ &=& \sqrt{3}\cdot \sqrt{3} + 0\cdot 1 = 3 \end{eqnarray*}

である.これらより,ベクトル{\bf a}{\bf b}のなす角\theta\;(0\le \theta \le \pi)は,

(39)   \begin{eqnarray*} \cos \theta &=& \frac{ {\bf a \cdot b}}{| {\bf a}|\;|{\bf b}|}\\ &=& \frac{ 3 }{2 \sqrt{3} } = \frac{\sqrt{3}}{2} \\ \end{eqnarray*}

より

(40)   \begin{equation*} \theta = \arccos \frac{\sqrt{3}}{2} = \frac{\pi}{6} \quad (0\le \theta \le \pi) \end{equation*}

となる.

内積を用いたベクトルの直交条件(平行条件はクロス積を用いる)

式(34)を用いると,2つのベクトルの直交条件を定めることができる.

0\le \theta \le \piの下で,交角が\theta = \pi/2 となるとき,2つのベクトル{\bf a}{\bf b}は直交する.すなわち直交条件は

(41)   \begin{equation*} \theta = \pi/2 \iff \cos \theta = 0 \quad (0\le \theta \le \pi) \end{equation*}

なので,式(34)と合わせて

(42)   \begin{equation*} \cos \theta = \frac{ {\bf a \cdot b}}{| {\bf a}|\;|{\bf b}|} = 0. \end{equation*}

すなわち

(43)   \begin{equation*} {\bf a \cdot b}= 0 \end{equation*}

となれば,2つのベクトル{\bf a}{\bf b}は直交する.

(例)次の2つの3次元実ベクトル

(44)   \begin{equation*} {\bf a} = \left( \begin{array}{c} 0\\ -2\\ 1 \end{array} \right), \quad {\bf b} = \left( \begin{array}{c} 3\\ 2\\ 4 \end{array} \right) \end{equation*}

は直交する.なぜなら,

(45)   \begin{eqnarray*} {\bf a}^{\top}\cdot {\bf b}} &=& \left(0,-2,1\right) \left( \begin{array}{c} 3\\ 2\\ 4 \end{array} \right)\\ &=& 0\cdot 3 + (-2)\cdot 2 + 1 \cdot 4 = -4 + 4 = 0 \end{eqnarray*}

となるからである.

0\le \theta \le \piの下で,交角が\theta = \pi/2 となるとき,2つのベクトル{\bf a}{\bf b}は直交する.すなわち直交条件は

(46)   \begin{equation*} \theta = \pi/2 \iff \cos \theta = 0 \quad (0\le \theta \le \pi) \end{equation*}

なので,式(34)と合わせて

(47)   \begin{equation*} \cos \theta = \frac{ {\bf a \cdot b}}{| {\bf a}|\;|{\bf b}|} = 0. \end{equation*}

すなわち

(48)   \begin{equation*} {\bf a \cdot b}= 0 \end{equation*}

となれば,2つのベクトル{\bf a}{\bf b}は直交する.

(例)次の2つの3次元実ベクトル

(49)   \begin{equation*} {\bf a} = \left( \begin{array}{c} 0\\ -2\\ 1 \end{array} \right), \quad {\bf b} = \left( \begin{array}{c} 3\\ 2\\ 4 \end{array} \right) \end{equation*}

は直交する.なぜなら,

(50)   \begin{eqnarray*} {\bf a}^{\top}\cdot {\bf b}} &=& \left(0,-2,1\right) \left( \begin{array}{c} 3\\ 2\\ 4 \end{array} \right)\\ &=& 0\cdot 3 + (-2)\cdot 2 + 1 \cdot 4 = -4 + 4 = 0 \end{eqnarray*}

となるからである.

内積の性質

内積は次の性質を満たす.

内積の性質
  • 非負性 {\bf x}^{\top}\cdot {\bf x} \ge 0
  • 非退化性 {\bf x}^{\top}\cdot {\bf x} = 0 \Rightarrow {\bf x} = {\bf 0}
    ※ なお,内積の定義より,{\bf x} = {\bf 0} \Rightarrow {\bf x}^{\top}\cdot {\bf x} ={\bf 0}^{\top}\cdot {\bf 0} = 0なので,{\bf x}^{\top}\cdot {\bf x} = 0 \iff {\bf x} = {\bf 0}が成り立つ.
  • 交換法則(commutative property) {\bf x}^{\top}\cdot {\bf y} = {\bf y}^{\top}\cdot {\bf x}
  • 分配法則(distributive property) \left( {\bf x}_1+{\bf x}_2 \right)^{\top}\cdot {\bf y} = {\bf x}^{\top}_1 \cdot {\bf y} + {\bf x}^{\top}_2 \cdot {\bf y}
  • スカラー倍(scalar multiplication) \left(\alpha{\bf x}^{\top}\right) \cdot {\bf y} = \alpha \left( {\bf x}^{\top}\cdot {\bf y} \right)\alphaは定数.

なお,内積に関して成り立つこれらの性質は,後述する内積空間の定義において,内積の概念を一般化する際にも用いられる.

内積空間(inner product space) *

内積が定義されているベクトル空間(vector space) を 計量ベクトル空間(metric vector space) あるいは 内積空間(inner product space) という.

内積空間の定義は,以下の通りである.

内積空間(計量ベクトル空間)の定義
係数体 K を 実数体 {\mathbb R} または 複素数体 {\mathbb C} とする,K 上のベクトル空間 {\bf V} が与えられたとする.このベクトル空間 {\bf V} が,内積(inner product)と呼ばれる写像

(51)   \begin{equation*} \langle \cdot , \cdot \rangle : {\bf V} \times {\bf V} \to K \end{equation*}

を備え,かつ,この内積が次の3つの性質

  1. 共軛対称性(エルミート対称性):\langle {\bf x}, {\bf y} \rangle = \overline{\langle {\bf y}, {\bf x} \rangle} (^\forall{\bf x},{\bf y}\in {\bf V})
  2. 線形性:\langle a{\bf x}+ b{\bf y} , {\bf z} \rangle = a\langle {\bf x}, {\bf z} \rangle + b\langle {\bf y}, {\bf z} \rangle (^\forall a,b \in K, \; ^\forall{\bf x},{\bf y},{\bf z}\in {\bf V})
  3. 正定値性:\langle {\bf x}, {\bf x} \rangle \ge 0, \; \langle {\bf x}, {\bf x} \rangle = 0 \Rightarrow {\bf x} = 0 (^\forall{\bf x}\in {\bf V})

を満たすものであるとき, {\bf V}計量ベクトル空間(metric vector space) あるいは 内積空間(inner product space) という.

上述から分かる通り,内積の概念は,「共軛対称性・線形性・正定値性という〈内積の性質〉を備えた {\bf V} \times {\bf V} 上の写像(51)」として一般化される.

このような内積概念の一般化によって,内積を最初に導入する際に用いた,内積の定義(1)における「2つの有向線分の長さとそれらのなす角で定まる量(5)」や,内積の定義(2-2)における「数の n 個の組としての n 次元ベクトルの積和(15)」といった,幾何学的か代数的か等の情報を捨象することにより,元(elements)がどのような対象であるかに依存せずに内積を考えることができるようになる.

ベクトル空間(線形空間)の詳細については,以下の記事を参照のこと.

ベクトル空間(線形空間)および計量ベクトル空間(内積空間)の定義と公理【線形代数】

2021年2月9日

内積とは?内積の意味とイメージ

多くの解説では,内積の意味やイメージを,ベクトル{\bf a} へのベクトル{\bf a} の射影として,幾何学的に図示することによって与えている.これは,高等学校におけるベクトルの導入が,平面上の有向線分として,幾何学的なイメージとともに行われることと関係がある.

他方,多次元のベクトルや行列を,表計算(spreadsheet)やデータベース上の表(table)のような「〈値の組〉の代数」としてイメージすることも,科学や工学においてビッグデータや人工知能などのデータ駆動型(data-driven)アプローチが重要になっている今日,重要なことであろう.

本稿では,定義(2-1)および定義(2-2)に関係する,代数的なイメージを例示する.

例.品物の合計金額(単価と個数の積和)

たまご(egg),キャベツ(cabbage),人参(carrot)のデータを

(52)   \begin{equation*} \left( \begin{array}{c} \text{egg} \\ \text{cabbage} \\ \text{carrot} \\ \end{array} \right) \end{equation*}

の順に書き並べる.それぞれの単価と個数が次の表

のように与えられたとすると,単価データと個数データがそれぞれベクトル{\bf x}{\bf y}

(53)   \begin{equation*} {\bf x}= \left( \begin{array}{l} \text{the price of an egg} \\ \text{the price of a cabbage} \\ \text{the price of a carrot} \end{array} \right) = \left( \begin{array}{r} 30 \\ 200 \\ 40 \end{array} \right) \end{equation*}

(54)   \begin{equation*} {\bf y}= \left( \begin{array}{l} \text{the number of eggs} \\ \text{the number of cabbages} \\ \text{the number of carrots} \end{array} \right) = \left( \begin{array}{r} 10 \\ 3 \\ 10 \end{array} \right) \end{equation*}

のように表すことができる.このとき,それらの内積は

(55)   \begin{eqnarray*} {\bf x}^{\top}\cdot{\bf y} &=& \left( 30,200,40 \right) \left( \begin{array}{r} 10 \\ 3 \\ 10 \end{array} \right)\\ &=&30\cdot 10 + 200\cdot 3 + 40 \cdot 10 = 1300 \end{eqnarray*}

であり,品物の合計金額に相当する.

「内積」の英語は?

内積(ないせき,英: inner product)

内積は英語でinner productという.

内積はドット積(dot product)あるいはスカラー積(scalar product)と呼ばれることもある.

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