回転行列による実ベクトルの回転(2次元・3次元)

回転行列は,ユークリッド空間上のベクトルとの積を取ることにより,そのベクトルを回転させる演算子(作用素)として働きます.このことを,2次元回転行列および3次元回転行列に関して,三角関数の加法定理を用いて証明します.また,回転行列の転置行列,逆行列,行列式などの性質とその意味を説明します.

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2次元回転行列

2次元回転行列とは

2次元回転行列
2次元直交座標上の実ベクトル {\bf r} = (x,y) \in {\mathbb R}^2 を,原点の周りで角度 \alpha だけ回転させる演算子(operator) R(\alpha) は,次の 2\times 2 行列で表すことができる:

(1)   \begin{equation*} R(\alpha) = \left( \begin{array}{cc} \cos \alpha & - \sin \alpha\\ \sin \alpha & \cos \alpha \end{array} \right) \end{equation*}

行列 R(\alpha) は,2次元ベクトルに左から作用させることにより,原点の周りでベクトルを角度 \alpha だけ回転させる.

以下に R(\alpha) によるベクトルの回転

(2)   \begin{equation*} R(\alpha):{\mathbb R}^2 \to {\mathbb R}^2:{\bf r} \mapsto {\bf r}'  \end{equation*}

の模式図を示す.

回転行列がベクトルを回転させることの証明(2次元)

2次元直交座標上の任意の実ベクトル {\bf r} = (x,y) は,適当な r \in [0, \infty) および \theta \in [0, 2\pi) を用いて

(3)   \begin{equation*} {\bf r} = \left( \begin{array}{c} x\\ y \end{array} \right) = \left( \begin{array}{c} r \cos \theta\\ r \sin \theta \end{array} \right) \end{equation*}

と書ける(ただし r=|{\bf r}|=\sqrt{x^2+y^2} ).また,このベクトル {\bf r} を原点の周りに角度 \alpha だけ回転させたベクトル {\bf r}' = (x',y') は,

(4)   \begin{equation*} {\bf r}' = \left( \begin{array}{c} x'\\ y' \end{array} \right) = \left( \begin{array}{c} r \cos (\theta + \alpha)\\ r \sin (\theta + \alpha) \end{array} \right) \end{equation*}

と書ける.

他方,ベクトル {\bf r} に,式(1)で定義される2次元回転行列 R(\alpha) を掛けると,ベクトルと行列の積,および三角関数の加法定理に注意して,

(5)   \begin{eqnarray*} && R(\alpha)\;{\bf r} \\ &=& \left( \begin{array}{cc} \cos \alpha & - \sin \alpha\\ \sin \alpha & \cos \alpha \end{array} \right) \left( \begin{array}{c} r \cos \theta\\ r \sin \theta \end{array} \right)\\ &=& \left( \begin{array}{c} r \cos \theta \cos \alpha - r \sin \theta \sin \alpha\\ r \sin \theta \cos \alpha + r \cos \theta \sin \alpha \end{array} \right)\\ &=& \left( \begin{array}{c} r \cos (\theta + \alpha)\\ r \sin (\theta + \alpha) \end{array} \right)\\ &=& {\bf r}' \end{eqnarray*}

すなわち

(6)   \begin{equation*} {\bf r}'= R(\alpha)\;{\bf r} \end{equation*}

となることがわかる.

結局,式(1)で定義される回転行列 R(\alpha) は,2次元直交座標上のベクトル {\bf r} = (x,y) を原点の周りに角度 \alpha だけ回転させる作用の,行列表現であることが示された.

2次元回転行列の積

2次元回転行列の積
2つの2次元回転行列 R(\alpha)R(\beta) の積について,次式が成り立つ.

(7)   \begin{equation*} R(\alpha)R(\beta) = R(\alpha + \beta) \end{equation*}

上式(7)は,次のことを意味する.2つの2次元回転行列の積 R(\alpha)R(\beta) は,左から作用させることで,ベクトルを角度 \beta だけ回転させた後,さらに角度 \alpha だけ回転させる.これは,双方を合わせてベクトルを角度 \alpha + \beta だけ回転させること,すなわち回転行列 R(\alpha+\beta) を作用させることに等しい.

上式(7)は,次の通りに確かめることができる:

(8)   \begin{eqnarray*} && R(\alpha)R(\beta)\\ &=& \left( \begin{array}{cc} \cos \alpha & - \sin \alpha\\ \sin \alpha & \cos \alpha \end{array} \right) \left( \begin{array}{cc} \cos \beta & - \sin \beta\\ \sin \beta & \cos \beta \end{array} \right)\\ &=& \left( \begin{array}{cc} \cos \alpha \cos \beta - \sin \alpha \sin \beta & - \sin \alpha \cos \beta - \cos \beta \sin \alpha\\ \sin \alpha \cos \beta + \cos \beta \sin \alpha & \cos \alpha \cos \beta - \sin \alpha \sin \beta \end{array} \right)\\ &=& \left( \begin{array}{cc} \cos ( \alpha + \beta ) & - \sin ( \alpha + \beta ) \\ \sin ( \alpha + \beta )  & \cos ( \alpha + \beta )  \end{array} \right)\\ &=& R(\alpha + \beta) \end{eqnarray*}

2次元回転行列の逆行列と逆回転

2次元回転行列の逆行列と逆回転
2次元回転行列 R(\alpha) について,次式が成り立つ.

(9)   \begin{equation*} R(-\alpha)R(\alpha)=R(\alpha)R(-\alpha)=I \end{equation*}

すなわち

(10)   \begin{equation*} R(-\alpha)=R^{-1}(\alpha) \end{equation*}

が成り立つ.ただし,I は単位行列,R^{-1}(\alpha)R(\alpha) の逆行列である.

上式(9)は,次のことを意味する.R(-\alpha)R(\alpha) は,左から作用させることで,ベクトルを角度 \alpha だけ回転させた後,さらに角度 -\alpha だけ回転させる(すなわち元の角度分だけ逆回転させる).これは,双方を合わせてベクトルを角度 \alpha だけ回転させたのちに元に戻すこと,すなわち何もしないことに等しく,あるいは単位行列 I を作用させることに等しい.またこのことは,行列 R(-\alpha)R(\alpha) の「逆の操作」であり,逆行列 R^{-1}(\alpha) に等しいことを意味し,式(10)として表せる.

(11)   \begin{equation*} \underset{R^{-1}}{\overset{R}{\rightleftharpoons}} \end{equation*}

上式(9)は,次の通りに確かめることができる.R(-\alpha)R(\alpha) について,

(12)   \begin{eqnarray*} && R(-\alpha)R(\alpha) \\ &=& \left( \begin{array}{cc} \cos (-\alpha) & - \sin (-\alpha)\\ \sin (-\alpha) & \cos (-\alpha) \end{array} \right) \left( \begin{array}{cc} \cos \alpha & - \sin \alpha\\ \sin \alpha & \cos \alpha \end{array} \right)\\ &=& \left( \begin{array}{cc} \cos (-\alpha) \cos \alpha - \sin (-\alpha) \sin \alpha & - \sin (-\alpha) \cos \alpha - \cos (-\alpha) \sin \alpha\\ \sin (-\alpha) \cos \alpha + \cos (-\alpha) \sin \alpha & \cos (-\alpha) \cos \alpha - \sin (-\alpha) \sin \alpha \end{array} \right)\\ &=& \left( \begin{array}{cc} \cos 0 & - \sin 0 \\ \sin 0  & \cos 0 \end{array} \right)\\ &=& \left( \begin{array}{cc} 1 & 0 \\ 0  & 1 \end{array} \right)\\ &=& I \end{eqnarray*}

となる.また R(\alpha)R(-\alpha) についても同様にして,R(\alpha)R(-\alpha)=I を確かめることができる.

さらに,一般の正方行列 A に対して,AB = BA = I を満たすような正方行列 B は,A の逆行列といい,A^{-1} で表す.

R(-\alpha) は,R(\alpha) に対して,この逆行列の定義を満たしていることから,R(\alpha) の逆行列を R^{-1}(\alpha) と書くことにすれば,式(10) を得る.

3次元回転行列

3次元回転行列とは

3次元直交座標上のベクトル {\bf r} =(x,y,z) を,

x 軸; あるいは ベクトル {\bf e}_x = \left( 1,0,0 \right)
y 軸; あるいは ベクトル {\bf e}_y = \left( 0,1,0 \right)
z 軸; あるいは ベクトル {\bf e}_z = \left( 0,0,1 \right)

の周りで角度 \alpha だけ回転させる演算子 R_x(\alpha)R_y(\alpha)R_z(\alpha) は,それぞれ次の 3\times 3 行列で表すことができる:

3次元回転行列
x 軸周りでベクトルを右ねじの回転方向に回す回転行列:

(13)   \begin{equation*} R_x(\alpha) = \left( \begin{array}{ccc} 1 & 0 & 0 \\ 0 & \cos \alpha & - \sin \alpha\\ 0 & \sin \alpha & \cos \alpha \end{array} \right) \end{equation*}

y 軸周りでベクトルを右ねじの回転方向に回す回転行列:

(14)   \begin{equation*} R_y(\alpha) = \left( \begin{array}{ccc} \cos \alpha & 0 & \sin \alpha\\ 0 & 1 & 0 \\ -\sin \alpha & 0 & \cos \alpha \end{array} \right) \end{equation*}

z 軸周りでベクトルを右ねじの回転方向に回す回転行列:

(15)   \begin{equation*} R_z(\alpha) = \left( \begin{array}{ccc} \cos \alpha & - \sin \alpha & 0\\ \sin \alpha & \cos \alpha & 0\\ 0 & 0 & 1  \end{array} \right) \end{equation*}

行列 R_x(\alpha)R_y(\alpha)R_z(\alpha) は,3次元ベクトルに左から作用させることにより,それぞれ x 軸,y 軸,z 軸の周りで,ベクトルを角度 \alpha だけ回転させる.

以下に R_z(\alpha) によるベクトルの回転

(16)   \begin{equation*} R_z(\alpha):{\mathbb R}^3 \to {\mathbb R}^3:{\bf r}_1 \mapsto {\bf r}_2 \end{equation*}

の模式図を示す.

回転行列がベクトルを回転させることの証明(3次元)

3次元直交座標上の任意の実ベクトル {\bf r}_1 = (x_1,y_1,z_1) は,円柱座標系 (r,\theta, \varphi) r \in [0, \infty)\theta \in [0, 2\pi)\varphi \in [0, \pi) を用いて

(17)   \begin{equation*} {\bf r}_1 = \left( \begin{array}{c} x_1\\ y_1 z_1 \end{array} \right) = \left( \begin{array}{c} r \cos \theta \sin \varphi \\ r \sin \theta \sin \varphi \\ r \cos \varphi \end{array} \right) \end{equation*}

と書ける(ただし r=|{\bf r}_1|=\sqrt{x_1^2+y_1^2+z_1^2} ).また,このベクトル {\bf r}z 軸の周りで角度 \alpha だけ回転させたベクトル {\bf r}_2 = (x_2,y_2,z_2) は,

(18)   \begin{equation*} {\bf r}_2 = \left( \begin{array}{c} x_2\\ y_2 z_2 \end{array} \right) = \left( \begin{array}{c} r \cos (\theta + \alpha) \sin \varphi \\ r \sin (\theta + \alpha) \sin \varphi \\ r \cos \varphi \end{array} \right) \end{equation*}

と書ける.

他方,ベクトル {\bf r}_1 に,式(15)で定義される,z 軸周りの回転行列 R_z(\alpha) を掛けると,ベクトルと行列の積,および三角関数の加法定理に注意して,

(19)   \begin{eqnarray*} R_z(\alpha)\;{\bf r}_1 &=& \left( \begin{array}{ccc} \cos \alpha & - \sin \alpha & 0\\ \sin \alpha & \cos \alpha & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{array} \right) \left( \begin{array}{c} r \cos \theta \sin \varphi \\ r \sin \theta \sin \varphi \\ r \cos \varphi \end{array} \right))\\ &=& \left( \begin{array}{c} r \sin \varphi ( \cos \theta \cos \alpha - \sin \theta \sin \alpha)\\ r \sin \varphi ( \sin \theta \cos \alpha + \cos \theta \sin \alpha)\\ r \cos \varphi \end{array} \right)\\ &=& \left( \begin{array}{c} r \cos (\theta + \alpha) \sin \varphi \\ r \sin (\theta + \alpha) \sin \varphi  r \cos \varphi \end{array} \right)\\ &=& {\bf r}_2 \end{eqnarray*}

すなわち

(20)   \begin{equation*} {\bf r}_2 = R_z(\alpha)\;{\bf r}_1 \end{equation*}

となることがわかる.

結局,式(15)で定義される,z 軸周りの回転行列 R_z(\alpha) は,3次元直交座標上のベクトル {\bf r}_1 = (x_1,y_1,Z\1) を,z 軸の周りで角度 \alpha だけ回転させる作用の,行列表現であることが示された.

x 軸周りの回転行列 R_x(\alpha) および y 軸周りの回転行列 R_y(\alpha) についても,円柱座標系を適当に設定することにより,同様にベクトルの回転を確かめることができる.

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