誤差関数(error function)を定義し,そのグラフを描きます.また正規分布のCDFを誤差関数で表すための計算を示します.相補誤差関数(complementary error function)についても説明します.
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誤差関数と相補誤差関数
誤差関数(error function)の定義
誤差関数(error function)とは,次式で定義される関数 である:
(1)
相補誤差関数(complementary error function)の定義
相補誤差関数(complementary error function) は,誤差関数 を用いて,
(2)
と定義される.
誤差関数と正規分布の累積分布関数の関係
誤差関数 あるいは相補誤差関数 を用いると,正規分布の累積分布関数(CDF) は,
(3)
のように表すことができる.詳細は後節 誤差関数と正規分布の累積分布関数 に述べる.
誤差関数の意味
誤差関数は,主に正規分布の累積分布関数(CDF)を記述する際に用いられる特殊関数(special function)の一種である.一般にCDFは,確率密度関数(PDF)の定積分によって与えられるが,正規分布のPDFに対してはこの積分を解析的に実行することができない.言い換えると,正規分布のCDFは何らかの初等関数によって表すことができない.
そこで誤差関数(1)を導入する.正規分布のCDFと同様,式(1)の右辺は解析的に実行できないが,この積分値は分かっているものとみなして,これを誤差関数と名付けるのである.
正規分布のCDFは,本質的には式(1)の積分なので,誤差関数を用いて表すことができるが,これによってただちに正規分布のPDFが積分できたことになるわけではない.このことは,正規分布のCDFをなる関数の記号によって略記したもの,とみる方が,混乱がないであろう.
誤差関数のグラフの概形
誤差関数(1)および相補誤差関数(2)のグラフの概形を以下に示す.
誤差関数の性質
正規分布の累積分布関数の積分範囲がであるのに対し,誤差関数(1)の積分範囲はとなっていることに注意せよ.
誤差関数は原点を通る関数である.のとき,式(1)は
(4)
となる.
誤差関数は奇関数である.実際,定義式(1)に従って
(5)
となる.ただし,式(5)の3~4行目において の被積分関数が偶関数であることから
(6)
なる変形を行った.
(7)
(8)
(9)
である.ただし,ガウス積分の公式
(10)
を用いた.
関連ページ:
ガウス積分の公式を証明/導出する:ヤコビアンと2重積分の極座標変換【微積分】
誤差関数と正規分布の累積分布関数 *
正規分布の累積分布関数
(11)
(12)
について,この積分を解析的に実行しを初等関数によって表すことはできないことが知られている.誤差関数および相補誤差関数は,この表示に利用される.
関連ページ:
正規分布(ガウス分布)とは何か【確率論】# 正規分布の累積分布関数
誤差関数による正規分布の累積分布関数の表示
正規分布の累積分布関数を初等関数で表すことはできないが,誤差関数 あるいは相補誤差関数 を用いて正規分布の累積分布関数を表すことがある.正規分布の累積分布関数 は,
のように表すことができる(式(3)を再掲).
正規分布の累積分布関数(11)および誤差関数の定義式(1)を用いれば,
(13)
となり,式(3)の上段を得る.ただし,1~2行目での変数変換
(14)
および4行目第1項におけるガウス積分
(15)
に注意せよ.また,式(13)の3行目から異なる変形をすると,
(16)
となり,式(3)の下段を得る.
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