ポアソン分布とは何か【確率論】

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ポアソン分布とは何か

ポアソン分布(Poisson distribution)は,期待値および分散に対応する1つのパラメータ \lambda によって一意に定まる,離散確率分布(discrete probability distribution)の一種である.

定義:ポアソン分布
離散確率変数Xの確率質量関数が

(1)   \begin{equation*} \psi_{X}(k) = \Pr(X= k) = \frac{\lambda^k e^{-\lambda}}{k!} \end{equation*}

ただし

(2)   \begin{equation*} k = 0,1,2,... \quad ; \quad \lambda>0 \end{equation*}

で与えられるとき,Xが従う確率分布を,パラメータ\lambdaのポアソン分布(Poisson distribution)という.

確率変数Xが,パラメータ\lambdaのポアソン分布に従うことを

(3)   \begin{equation*} X\sim {\rm Pois}(\lambda) \end{equation*}

などと略記する.

ポアソン分布の確率質量関数とそのグラフ

定義(1)に示した通り,ポアソン分布{\rm Pois}(\lambda)の確率質量関数(probability mass function; PMF) \psi_{X} は,次式である.

    \begin{equation*} \psi_{X}(k) = \Pr(X= k) = \frac{\lambda^k e^{-\lambda}}{k!} \end{equation*}

ポアソン分布の確率質量関数(1)グラフの概形を以下に示す.

ただし,ポアソン分布は離散確率分布であるから,値を取るのは上のグラフのマーカーの位置(すなわちk=0,1,2,...の位置)のみであるが,グラフの概形を把握しやすくするため,マーカー間を点線でつないだ.

ポアソン分布の累積分布関数とそのグラフ *

一般に,離散確率変数Xの累積分布関数(cumulative distribution function; CDF) F_{X}(k) は,Xの値がk以下である確率\Pr(X\le k)を与える関数であり,確率質量関数 \psi_{X} に対して

(4)   \begin{equation*} \Pr(X\le k) = F_{X}(k) = \sum_{i=k_{min}}^k \psi_X(i) \end{equation*}

の関係にある.ただし,k_{min}{\rm supp}(\psi_{X})の最小元とする.

式(1)および式(4)より,ポアソン分布{\rm Pois}(\lambda)の累積分布関数(cumulative distribution function; CDF) F_{X} は次式のようになる.

(5)   \begin{eqnarray*} F_{X}(k) &=& \Pr(X\le k) \\ &=& \sum_{i=0}^k \psi_{X}(i) \\ &=& \sum_{i=0}^k \frac{\lambda^i e^{-\lambda}}{i!} \end{eqnarray*}

ポアソン分布の累積分布関数(5)のグラフの概形を以下に示す.

ポアソン分布の期待値と分散

ポアソン確率変数Xの期待値(expected value)E[X],分散(variance)V[X],標準偏差(standard deviation)\sqrt{V[X]}は,それぞれ

(6)   \begin{equation*} E[X] = \lambda \end{equation*}

(7)   \begin{equation*} V[X] = \lambda \end{equation*}

(8)   \begin{equation*} \sqrt{V[X]} = \sqrt{\lambda} \end{equation*}

となる.

期待値および分散を求めるための計算の詳細については,下記の関連ページを参照のこと.

関連ページ:
ポアソン分布の計算:期待値(平均),分散,標準偏差の求め方【確率論】

ポアソン分布の積率母関数(モーメント母関数)

ポアソン分布 {\rm Pois}(\mu, \sigma2) に従う確率変数Xの積率母関数(moment generating function)は,次式で表される関数 M_X である.

(9)   \begin{equation*} M_X(\xi) = e^{\lambda (e^{\xi}-1)} \qquad(\xi \in {\mathbb R}) \end{equation*}

式(9)は,ポアソン分布の確率質量関数(1)の逆ラプラス変換によって得られる.導出の詳細については,下記の関連ページを参照のこと.

関連ページ:

ポアソン分布の特性関数

ポアソン分布 {\rm Pois}(\mu, \sigma2) に従う確率変数Xの特性関数(characteristic function)は,次式で表される関数 \Phi_X である.

(10)   \begin{equation*} \Phi_X(\xi) = e^{\lambda (e^{i\xi}-1)} \qquad(\xi \in {\mathbb R}) \end{equation*}

ただし,iは虚数単位である.

式(10)は,ポアソン分布の確率質量関数(1)のフーリエ逆変換によって得られる.導出の詳細については,下記の関連ページを参照のこと.

関連ページ:

ポアソン分布のキュムラント母関数

ポアソン分布 {\rm Pois}(\mu, \sigma2) に従う確率変数Xのキュムラント母関数(cumulant generating function)は,次式で表される関数 K_X である.

(11)   \begin{equation*} K_X(\xi) = \lambda (e^{\xi}-1)} \qquad(\xi \in {\mathbb R}) \end{equation*}

式(11)は,ポアソン分布の積率母関数(9)の対数を取ることよって得られる.

関連ページ:
特性関数・積率母関数(モーメント母関数)・キュムラント:定義と意味,期待値(平均)・分散との関係【確率論】

ポアソン分布と二項分布

二項分布B(n,p)の確率変数Xについて,np=\lambda(>0)は一定,という条件の下で,試行回数nが十分大きいとき,Xは近似的にポアソン分布 Pois(\lambda) に従う.

すなわち,二項分布B(n,p)の確率質量関数

(12)   \begin{eqnarray*} \Pr(X=k)=\psi_{\rm bin} (k;n,p)&=&\;_nC_k\;p^k(1-p)^{n-k}\\ &=&\frac{n!}{k!(n-k)!}\;p^k(1-p)^{n-k} \end{eqnarray*}

と,ポアソン分布 Pois(\lambda)の確率質量関数

    \begin{equation*} \Pr(Y= k) = \psi_{Pois}(k;\lambda) = \frac{\lambda^k e^{-\lambda}}{k!} \end{equation*}

に関して,np=\lambda={\rm const.}>0の条件の下で,任意のk=0,1,2,...に対して

(13)   \begin{equation*} \lim_{n\to \infty} \psi_{\rm bin} (k;n,p) = \psi_{Pois}(k;\lambda) \end{equation*}

が成り立つ.

二項分布のポアソン分布近似に関する,より詳しい計算については,下記の関連ページを参照のこと.

関連ページ:

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