ベルヌーイ分布の確率質量関数から,ベルヌーイ確率変数の期待値(平均),分散,標準偏差を計算する方法を示します.ベルヌーイ分布は1回のベルヌーイ試行が従う確率分布であり,試行回数n=1とした二項分布B(1,p)に一致します.これらは確率論における計算です.
また,統計学における標本平均・標本分散・標本標準偏差の定義式も示します.こちらは「確率論における期待値・分散・標準偏差」とは関連しつつも区別される概念であり,定義式も異なります.
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ベルヌーイ分布の確率質量関数,期待値,分散,標準偏差
ベルヌーイ試行とベルヌーイ分布
ある事象(event)が「起こるか・起こらないか」だけに着目した試行(trial)をベルヌーイ試行(Bernoulli trial)という.標本空間(sample space)をとするベルヌーイ試行において,「事象Aが起こる()」確率をとすると,「事象Aが起こらない()」確率はとなる.また,ベルヌーイ確率変数を,
(1)
すなわち「事象Aが起こる()」ときに1を,「事象Aが起こらない()」ときに0を返すものと定義する.このとき,確率変数は,1つのパラメータで定まるベルヌーイ分布(Bernoulli distribution)
(2)
に従う.
ベルヌーイ分布の確率質量関数
1つのパラメータで定まるベルヌーイ分布の確率質量関数(probability mass function; PMF) は,
(3)
である.
なお,成功確率の独立なベルヌーイ試行を回繰り返した時に回成功する確率は,二項分布に従うが,ベルヌーイ分布はとした二項分布に他ならない.
ベルヌーイ分布の確率質量関数(3)において,に注意すると,全確率が1であることは次式の通りである.すなわち
(4)
ベルヌーイ分布の期待値,分散,標準偏差
ベルヌーイ分布の期待値(expected value)と分散(variance),標準偏差(standard deviation)は,それぞれ
(5)
(6)
(7)
である.
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標本平均,標本分散,標本標準偏差【統計学】
「統計学における標本平均・標本分散・標本標準偏差」は,「確率論における期待値・分散・標準偏差」と関連しつつも区別される概念であり,定義式も異なる.
標本平均,標本分散,標本標準偏差の定義式は,母集団が従う分布に依存しない.
統計学において,ある母集団から採られた 標本(sample) として
(14)
がなる 個のデータが与えられたとき,そのデータの 標本平均(sample mean) ,標本分散(sample variance) ,標本標準偏差(sample standard deviation) は,それぞれ
(15)
(16)
(17)
で定義される.
なお,これら標本平均・標本分散はそれぞれ,母集団の母平均・母分散の推定値(estimate)となる.
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