確率変数ⅩとYの和の期待値(平均)について,「Ⅹ+Yの期待値」=「Ⅹの期待値」+「Yの期待値」が成り立ちます.また,定数aに対して「aⅩの期待値」=「Ⅹの期待値のa倍」が成り立ちます.これらの性質を合わせた等式(期待値の線形性)を証明します.和の期待値の証明は,ここに含まれます.なお,Ⅹ,Yの独立性の仮定は必要ありません.
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「和の期待値」は「期待値の和」,期待値の線形性
確率変数の和と差の期待値(平均)の計算
上式の証明については,次節の「期待値の線形性」の証明の中に含まれる.期待値の線形性
式(1)あるいは式(2)は,それぞれあるいはとした,式(3)の特殊な場合である.したがって,式(1),式(2)に関する証明は,式(3)に関する証明をしておけば十分である.本稿では式(3)を証明する.
式(3)には,期待値の和に関する性質(1)と,期待値の定数倍に関する性質
(4)
の,2つの性質が含まれている.
期待値の線形性の証明
確率変数が,連続確率変数に従う場合と,離散確率変数に従う場合に分けて証明する.証明の手順はどちらも同様であり,主な相違は,確率密度関数と積分で定義されるか,確率質量関数と総和で定義されるかという,期待値に関する表記上の違いである.
なお,期待値の線形性を証明する際,との独立性(すなわちあるいは)に関する仮定は不要である.
証明(連続確率変数の場合)
確率変数を,結合確率密度関数(joint probability density function) に従う連続確率変数であるとする.この確率密度関数の台をとする.を任意定数として,期待値は
(5)
(6)
などとなる.式(5)の変数を分けながら積分を実行すると,
(7)
を得る.ただし,周辺確率密度関数(marginal probability density function) の定義
(8)
(9)
を用いた.■
証明(離散確率変数の場合)
確率変数を,結合確率質量関数(joint probability mass function) に従う離散確率変数であるとする.この確率質量関数の台をとする.を任意定数として,期待値は
(10)
(11)
などとなる.式(10)の変数を分けながら積分を実行すると,
(12)
を得る.ただし,周辺確率質量関数(marginal probability mass function) の定義
(13)
(14)
を用いた.■
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