正規分布の確率密度関数から,正規確率変数の期待値(平均)・分散・標準偏差を計算する方法を示します.計算の過程ではガウス積分の公式を用います.一般に,連続確率変数の期待値は,確率密度関数とその引数の積を積分することにより得られます.これらは確率論における計算です.
また,統計学における標本平均・標本分散・標本標準偏差の定義式も示します.こちらは「確率論における期待値・分散・標準偏差」とは関連しつつも区別される概念であり,定義式も異なります.
【スマホでの数式表示について】
正規分布の期待値(平均),分散,標準偏差【確率論】
正規分布(normal distribution)の確率密度関数(probability density function; PDF)
(1)
が与えられたとき,その確率変数の期待値(expected value),分散(variance),標準偏差(standard deviation)は,それぞれ
(2)
(3)
(4)
となる.
分散と標準偏差については,分散が先に定義され,標準偏差は分散の正平方根として定義される.
関連ページ:
指数分布の計算:期待値(平均),分散,標準偏差の求め方【確率論】
ポアソン分布の計算:期待値(平均),分散,標準偏差の求め方【確率論】
ガウス積分の公式:正規分布の計算に必要な積分
(5)
は,ガウス積分と呼ばれる(ガウス積分の計算方法は こちら).
正規分布の期待値と分散を計算する際,,,およびの積分結果を用いるので,まずこれらを計算しておこう.
の積分は,ガウス積分(5)でとしたものである.
(6)
(7)
(8)
のように,1行目右辺から2行目への計算で部分積分を行い,3行目第2項でガウス積分を行う.
関連ページ:
ガウス積分の公式を証明/導出する:ヤコビアンと2重積分の極座標変換【微積分】
正規分布の期待値の計算・求め方
(9)
ここで,標準化(standardization)と呼ばれる変数変換
(10)
(11)
となる.
正規分布の分散と標準偏差の計算・求め方
(12)
(13)
となる.よって,正規分布の分散は
(14)
となる.
標準偏差は分散の正平方根なので
(15)
となる.
標本平均,標本分散,標本標準偏差【統計学】
「統計学における標本平均・標本分散・標本標準偏差」は,「確率論における期待値・分散・標準偏差」と関連しつつも区別される概念であり,定義式も異なる.
標本平均,標本分散,標本標準偏差の定義式は,母集団が従う分布に依存しない.
統計学において,ある母集団から採られた 標本(sample) として
(16)
がなる 個のデータが与えられたとき,そのデータの 標本平均(sample mean) ,標本分散(sample variance) ,標本標準偏差(sample standard deviation) は,それぞれ
(17)
(18)
(19)
で定義される.
なお,これら標本平均・標本分散はそれぞれ,母集団の母平均・母分散の推定値(estimate)となる.
コメントを残す