2階線形常微分方程式の標準形と,その一般解の求め方を説明します.
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2階線形常微分方程式の標準形とは
2階線形常微分方程式(second order linear ordinary differential equation)について,以下のような形式は,標準形(canonical form)と呼ばれる.
(2) ![]()
は,適当な変数変換によって標準形(1)に帰着する.
2階線形常微分方程式の標準形の一般解
2階線形常微分方程式の標準形(1)の一般解(general solution)は以下の通りである.
あるいは,係数
を正負で場合分けすることにより,標準形(1)の一般解を以下のように書くこともできる.
なお,
のときの式(5)
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(8) ![]()
(9) ![]()
(10) ![]()
ただし,
は初期条件によって定まる任意定数である.
式(5)から式(8)~式(9)を導出する方法は,後節に述べる.
また,式(5)および式(6)をまとめて,式(3)とする方法についても,後節に述べる.
2階線形常微分方程式の標準形の一般解の求め方
標準形2階線形常微分方程式(1)の一般解(5)~(7)の求め方を示す.
,
とする.
式(1)の係数
について,(i)
,(ii)
,(iii)
と場合分けする.
(i) k>0 のとき
とする.このとき,与式(1)は
(11) ![]()
(12) ![]()
(13) ![]()
より,2行目右辺を移行して式(11)を得る.すなわち,式(12)は式(11)を満たすので,
の下で式(12)は標準形微分方程式(1)のひとつの解である.
(14) ![]()
(15) ![]()
より,この場合も,右辺を移行して式(11)を得る.すなわち,式(14)も式(11)を満たすので,
の下で式(14)も標準形微分方程式(1)のひとつの解である.
(16) ![]()
についても,同様に2階微分をとることにより,
の下で標準形2階微分方程式(1)の解となることがわかる.
この式(16)が,標準形2階微分方程式(11)の一般解(5)に他ならない.
なお,一般解(16)の各項(12)および(14)は,微分方程式(11)の基本解という.
(ii) k<0 のとき
とする.このとき,与式(1)は
(17) ![]()
(18) ![]()
(19) ![]()
より,2行目右辺を移行して式(17)を得る.すなわち,式(18)は式(17)を満たすので,式(17)すなわち
(20) ![]()
(21) ![]()
は,
の下で,それぞれ標準形微分方程式(1)の解である.
(22) ![]()
についても,同様に2階微分をとることにより,
の下で標準形2階微分方程式(1)の解となることがわかる.
この式(22)が,標準形2階微分方程式(17)の一般解(6)に他ならない.
なお,一般解(22)の各項(20)および(21)は,微分方程式(17)の基本解という.
(iii) k=0 のとき
与式(1で
とすると
(23) ![]()
を得る.ここから
を得るには,式(23)を2回積分するだけでよい.すなわち,
(24) ![]()
ただし,
は積分定数である.
結局これによって,
の下での標準形2階微分方程式(1)の一般解(7)
(25) ![]()
を得る.
2階線形常微分方程式の標準形の一般解の表現変換
標準形2階線形常微分方程式の一般解には,一見すると異なる,複数の書き方がある.
三角関数の合成を用いた一般解の表現変換
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は,三角関数の合成によって,式(8)
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あるいは式(9)
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のように書き換えることができる.
オイラーの公式を用いた一般解の表現変換
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は,オイラーの公式(Euler’s formula)を用いて,式(10)
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のように書き換えることができる.
(26) ![]()
であり,これを用いて,指数関数と三角関数を互いに変換することができる.式(26)の正負両式を,辺々足し引きすることにより,余弦および正弦の指数関数表示を得る.余弦については
(27) ![]()
(28) ![]()
である.
(29) ![]()
となり,式(10)を得る.
係数の正負に伴う一般解の場合分けを統合する
式(1)の係数
の正負に伴って場合分けされた一般解(5)および(6)をまとめて,式(3)とする方法について述べる.
式(5)は式(10)と書き直せることを既に述べので,(10)と(6)をまとめる.
式(10)について,
の定義
より,
(30) ![]()
したがって
(31) ![]()
だが,一般解(10)において,任意定数
は不定であることに注意すると,適宜これらを入れ替えてもよいので,一般に式(10)を
(32) ![]()
と書いてよい.
次に,式(6)について,
の定義
より,
(33) ![]()
したがって
(34) ![]()
であり,
の場合と同様,一般解(6)において任意定数
は不定であることに注意すると,一般に式(6)を
(35) ![]()
と書いてよい.



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