直流RL回路(抵抗,コイル,直流電源を直列につないだ回路)は,1階常微分方程式によってモデル化することができます.微分方程式の例題として,直流RL回路方程式の解法を示します.
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直流RL回路
直流RL回路とは,直流電源,コイル,抵抗の3要素を直列につないだ電気回路であり,1階非同次常微分方程式によって記述できる.
定電圧直流起電力を
,コイルの自己インダクタンスを
,抵抗を
とし,回路を流れる電流を時刻
の関数として
と書くことにすると,コイルによる自己誘導起電力は
,抵抗による電圧降下は
だから,この直流RL回路は
(1) ![]()
なる等式を満たす.(1)式の左辺は回路の起電力の合計,右辺は回路の電圧降下である.(1)式は電流
に関する1階非同次常微分方程式であり,解析的に解くことができる.
解法
1階非同次常微分方程式(1)式は,
1. 式の整理
2. 同次方程式の一般解を求める
3. 定数変化法により非同次方程式の一般解を求める
4. 上記3.で得た一般解に初期条件を与え,特解を求める
を順に行うことで,その解を求めることができる.
1. 式の整理
(1)式を適当に移項して両辺を
で割ることにより,1階非同次常微分方程式
(2) ![]()
を得る.これを解いて,
の関数
を具体的に求めることが,やるべきことである.
2. 同次方程式の一般解を求める
非同次方程式(2)の解を直接求めることはできないので,まず
とおいた同次方程式
(3) ![]()
をつくり,これを解く.(3)式は変数分離形であることに注意すれば,
(4) ![]()
を得る.これが同次方程式(3)の一般解である.
3. 定数変化法により非同次方程式の一般解を求める
(5) ![]()
に対して,定数変化法を用いる.
(6) ![]()
を考え,これを非同次方程式(2)の解とみなして
を決定する.すなわち,(6)を非同次方程式(2)に代入して,
について解けばよい.(6)に関する積の微分に注意すると,
(7) ![]()
(8) ![]()
を得る.ただし,
は不定な積分定数である.これを(6)式に代入すれば,
(9) ![]()
より,非同次方程式(2)の一般解
(10) ![]()
を得る.
4. 上記3.で得た一般解に初期条件を与え,特解を求める
非同次方程式(2)の一般解(10)は不定な定数
を含む関数族である.ここに,初期条件を与えること(すなわち,特定の時刻にとる状態をひとつ指定すること)により,特解(すなわち
の関数)を求める.ここでは,初期条件を
(11) ![]()
としたときの特解を求めてみよう.すなわち,(10)が(11)を満たさなければならないので,
(12) ![]()
を得る.これを再び(10)に代入すれば,初期条件(11)の下での非同次方程式(2)の特解
(13) ![]()
を得る.なお,上式で極限
をとるとき,定常状態としてオームの法則
(14) ![]()
を得る.すなわち,時刻0で定圧起電力
を開始する直流RL回路の電流は,コイルの自己誘導起電力に由来する過渡現象を経て,十分時間が経過した後,オームの法則に基づく定常電流となる.

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