定数係数の斉次(同次)2階線形常微分方程式の一般解の求め方を説明します.
標準形の微分方程式に変形して解く方法と,特性方程式および定数変化法を用いて解く方法の,2種類の解法があります.
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斉次(同次)2階線形常微分方程式とは
一般に,定数係数の2階線形常微分方程式(second-order linear ordinary differential equation)とは,次式のような微分方程式である.
(1) ![]()
特に,式(1)において,任意の
に対して
であるとき,これを斉次あるいは同次(homogeneous)であるという.
すなわち,定数係数の斉次(同次)2階線形常微分方程式(second order linear ordinary homogeneous differential equation)とは,次式のような微分方程式である.
これに対して,式(1)が
であるとき,これを非斉次あるいは非同次(non-homogeneous)であるという.
斉次(同次)2階線形常微分方程式の一般解
定数係数の斉次2階線形常微分方程式(2)の一般解(general solutions)は,次式である.
与式(2)の解法として,標準形の微分方程式に変形して解く方法と,特性方程式および定数変化法を用いて解く方法の,2種類がある.
また後節で述べる通り,式(3)は,式(1)の特性方程式の解として導くことができる.
斉次(同次)2階線形常微分方程式の一般解の求め方(標準形を用いる方法)
,
などとする.
2階線形常微分方程式を標準形に変形する
定数係数の斉次2階線形常微分方程式(2)
(6) ![]()
(7) ![]()
で定義される従属変数の変数変換
によって,標準形の2階微分方程式
(8) ![]()
(9) ![]()
である.
なお,標準形への変形に関する詳しい説明は,以下の記事を参照のこと.
標準形の2階微分方程式を解く
標準形の2階微分方程式(8)を解いて,一般解
(10) ![]()
を得る.ただし,
は虚数単位,
は初期条件によって定まる任意定数である.
なお,標準形2階微分方程式の解法については,以下の記事を参照のこと.
標準形の一般解から元の2階微分方程式の一般解を求める
さて,従属変数の変数変換(7)に,標準形の一般解(10)を代入すれば,元の2階微分方程式(6)の一般解が以下のように得られる.
(11) ![]()
(12) ![]()
である.式(4)および(5)は,上式(11)および(12)を,それぞれ以下の手順で整理することにより得られる.
(1)k ≠ 0 のとき
のとき,式(11)を,
の定義式(9) および 定数
の定義式(3)に注意して変形すると,
(13) ![]()
となり,式(4)を得る.
(2)k = 0 のとき
のとき,式(9)より
(14) ![]()
であることに注意すると,式(3)より,定数
は等しく,
(15) ![]()
となる.したがって,式(12)は
(16) ![]()
となり,式(5)を得る.
斉次(同次)2階線形常微分方程式の一般解の求め方(特性方程式を用いる方法)
本節では,定数係数の斉次2階線形常微分方程式について,特性方程式と呼ばれる2次方程式を用いることにより,標準形への変換を経由せずに一般解を求める方法を述べる.
すなわち,基本解となる関数の族を仮定した上で,一般解のパラメータを特性方程式を解くことにより決定する方法である.
,
などとする.
解となる関数族を仮定する
定数係数の斉次2階線形常微分方程式(2)すなわち
(17) ![]()
(18) ![]()
を仮定した上で,式(17)を満たす
を決定することを考える.ただし,
は
なる任意定数とする.
特性方程式によるパラメータの決定
式(18)の1階微分,2階微分が
(19) ![]()
(20) ![]()
(21) ![]()
(22) ![]()
を得る.この式(21)を2階微分方程式(17)の特性方程式という.
式(17)を満たす
を求めるには,
に関する2次方程式である特性方程式(22)を解けばよい.すなわち,
(23) ![]()
(24) ![]()
とおく.これは,本稿冒頭で天下り的に与えた式(3)に他ならない.これらを式(18)に代入して,2つの解
(25) ![]()
(26) ![]()
を得る.
定数変化法を用いた一般解の導出
式(25)または式(26)に対して,定数変化法を行い,一般解を求める(なお,以下の議論において,式(25)と式(26),
と
,および
と
は,入れ替えても一般性を失わない.以下,入れ替え可能であることを念頭におくとする).
定数変化法は,式(25)の定数
を
の関数とみなして
と置き直し,
(27) ![]()
とした上で,これが元の2階微分方程式(17)の解となるように,関数
を決定する方法である.
式(27)の1階微分,2階微分は,それぞれ積の微分法に注意して,
(28) ![]()
(29) ![]()
(30) ![]()
を得る.
ただし,上式(30)の変形では,次のことを用いた.まず,任意の
に対して
(31) ![]()
であることから,4行目から5行目への変形が成り立つ.また,5行目の
の係数
は特性方程式の左辺であって,
は特性方程式の解だから,
(32) ![]()
であり,5行目から6行目への変形が成り立つ.さらに,2次方程式の解と係数の関係
(33) ![]()
より,特性方程式(22)の解
と係数
について,
(34) ![]()
(35) ![]()
となり,6行目から7行目への変形が成り立つ.
さて,式(30)の最終行の方程式
(36) ![]()
を解けば,
を決定することができる.式(36)は,
に関する2階微分方程式だが,
の項がないため,
に関する1階微分方程式とみることもできる.
と置くことにすると,変数分離形の解法に注意して,
(37) ![]()
となる.ただし,
は任意の積分定数,したがって
も任意定数である.
式(37)より
が得られたので,これをさらに
で積分することにより
が得られる.ただし,積分はパラメータ
の値によって場合分けする必要がある.
最終的には,得られた
を,最初に仮定した解(27)に代入して,斉次2階微分方程式(17)の一般解を得る.
(1)L ≠ 0 のとき
(38) ![]()
となる.ただし
は任意の積分定数であり,また第1項の定数係数を
とした.これを最初に仮定した解(27)に代入すると,一般解が
(39) ![]()
のように得られる.これは一般解(4)に他ならない.
(2)L = 0 のとき
(40) ![]()
となる.ただし
は任意の積分定数である.また,
より
とおく.これらを最初に仮定した解(27)に代入すると,一般解が
(41) ![]()
のように得られる.これは一般解(5)に他ならない.



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